第15回 バブル時代 台風編 
15年前、今年も台風が来た。昔、高知は台風銀座と呼ばれていた。高知の田舎で銀座と言う概念がないので恐らく都会人が勝手に台風銀座と命名したのは想像に難くない。

当時、家族は女房と娘当時2歳と私の3人家族だった。
ローカルテレビでは大型の台風が高知へ上陸すると繰り返し放送していた。台風には慣れたもので大した事はないただのそよ風や。。。私は高をくくっていた。とりあえず飛びそうなものを昼間のうちにかたずけ深い睡眠に落ちていった。
丑三つ時、女房が私を揺さぶった。私は「今日は疲れちゅうきい・・」と不機嫌な顔で答えた。女房が激しく私を蹴った。なんちゅう女な・・と思いつつ無視した。女は言った「家が倒れそうで・・」女房の顔を見た。化粧がはがれて誰だが一瞬わからなかった。私はやっと我にかえった。確かに猛烈な風がマイホームを揺さぶっている。その上、天井を見ると屋根が半分ない。フロアは水浸しだ。このままでは危ない、一家は窮地に追い込まれた。

安易に外に出れば危険だ。災害時、一番大切なのは冷静な判断である。私は家族に宣言した。「落ち着け。大丈夫だ。」
私には考えがあった。私が特殊部隊となり家族を無事救出するのである。現代のイメージで言うと24のジャック・バウアーだ。

まず玄関まで歩伏前進だ。振り向くと娘は床を滑って遊んでいる。女房は無防備に歩いている。女房二等兵・・・愚かな奴だ。。。やっとの思いで玄関にたどり着いた。
玄関の扉を開け、すかさず懐中電灯を暗闇に構える。「クリヤー」女房と娘を呼ぶ。
地上につながる階段がちぎれそうに揺れている。私は女房二等兵に指示した。「退避!!」 部隊は3歩後退した。みんなの時計を合わす事を指示した。女房二等兵は「面倒くさい」と命令を無視した。
上官の命令を無視した上に娘を連れて玄関から出て行こうとした。通常なら娘の親権を争って紛争になる所だが非常事態なので私も後ろをついて行った。

賢明な読者はもうお分かりだろう。女房二等兵は低重心なので後ろにいれば風の影響を最小限に抑える事ができるのである。スリップストリーム(※1)だ。
女房二等兵が運転席に飛び乗った。私もすかさずナビシートに滑り込み「GO!!GO!!GO!!」と指示を出した。そのまま実家へ非難。

後でわかった事だが竜巻が発生していたとの事だ。
一階、二階のガラスは割れ屋根は500M先から見つかった。
だがバブルの余韻が残っていた頃だったので火災保険がかなり降り事なきと言うよりむしろラッキーだった時代である。
私の冷静な判断が家族を救った物語である。


(※1)走行中の物体は、空気による抵抗力を常に受けている。抗力においては相対速度のみが2乗で加算されるため、低速域での空気抵抗は限定的であるが、ある程度の高速域になると急激に抵抗力が強くなるので、加速のためのエネルギーの多くが空気抵抗に打ち勝つことに費やしてしまい、速度が空気抵抗に制限され頭打ちとなる。その状態の時、物体の真後ろ近辺では前方で空気を押しのけた分気圧が下がっており、そこでは空気の渦が発生し周りの空気や物体などを吸引する効果を生むほか、空気抵抗も通常より低下した状態となっている。この現象をスリップストリームと言う。